AEO総研 — 後編 · General

AIに「推される企業」は、何が違うのか。

前編で、AIが商品を選ぶ評価軸(ドライバー)は商品ジャンルごとに違う、と書きました。中編で、AIがそのドライバーをどこで判断するか——引用元・参照元の地図——は業種ごとに違う、と書きました。 では、最後に、残った問いに答えます。 結局のところ、規模の大きい企業・有名な企業ほど、AIに推されやすいのでしょうか。長く積み上げてきた知名度や、検索での上位表示は、AI上の可視性に、そのまま引き継がれるのでしょうか。そして、なぜ、対策は早く始めた企業ほど有利になるのでしょうか。

本稿の中心にある「規模や知名度は、AIの推薦に、そのままは引き継がれない」という見方は、私たち(AEO総研)が、消費財から金融・通信、BtoB のサービスまで、40を超えるカテゴリでAIの推薦を継続的に観測するなかで、繰り返し見てきたものです。公開レポートの要約ではなく、自分たちの観測に基づく整理として書いています。

I

大きいから推される、とは限りません。

まず、多くの企業が、無意識に持っている前提から始めます。

「自社は、業界でも大手で、知名度もあり、よく売れている。だから、AIにも、ちゃんと推されているはずだ」。この前提は、自然なものに思えます。これまでのマーケティングでは、規模と知名度は、たいてい、そのまま強さでした。大きいほど、広告も打てて、棚も取れて、想起もされる。

ところが、AIの推薦を実際に観測してみると、この前提は、しばしば崩れます。規模や知名度と、AIの推薦は、きれいには一致しません。 売上で実質トップのブランドが、AIに「おすすめは」と尋ねると、上位に出てこない。一方で、規模では中位の、それほど名の知られていないブランドが、AIには繰り返し挙がる。こうした食い違いが、業種を問わず、ふつうに起こります。

少し、立ち止まって考えてみてください。これは、これまでのマーケティングの常識を、静かに裏返します。これまでは、規模を大きくすれば、想起も指名も増える、という関係が成り立っていました。お金をかけて知名度を上げれば、選ばれやすくなる。ところがAIの推薦では、その関係が、いつも成り立つとは限りません。知名度を上げても、AIが見ている参照元のなかでの語られ方が変わらなければ、推薦は動かない。広告で築いた大きな声が、AIの前では、思ったほど響かない、ということが起こります。

たとえてみれば、こうです。これまでの市場では、いちばん大きな看板を出した店が、いちばん目に入りました。けれど、AIに「この街でいい店は」と尋ねると、AIは看板の大きさを見ているわけではありません。AIは、街の人たちがその店をどう語っているか、案内役がどの店を勧めているか、を集めて答えます。看板が大きくても、人の口に上っていなければ、AIの答えには出てこない。AIは、看板そのものではなく、口コミと案内を束ねる存在に、近いのです。

この逆転は、これから、もっと起こりやすくなります。AIに尋ねて選ぶ人が増えるほど、広告の物量で押し切る戦い方の効き目は、相対的に下がっていきます。代わりに、ジャンルのドライバーを押さえ、効く参照元で正しく語られている企業が、規模に関わらず、選ばれていく。市場の力学が、少しずつ、語られ方の質のほうへ、傾いていきます。

なぜ、こうなるのか。理由は、前編と中編で見てきたことに尽きます。AIが見ているのは、規模そのものではありません。AIが見ているのは、そのジャンルのドライバー(評価軸)に沿って、自社が、外の引用元・参照元のなかで、どう語られているか、です。規模が大きくても、肝心のドライバーに沿った語られ方が薄ければ、AIは推しません。逆に、規模が小さくても、ドライバーを押さえた語られ方が、効く参照元のなかにあれば、AIは推します。

この食い違いが見えにくいのには、もう一つ、理由があります。多くの担当者は、自社の名前を直接AIに尋ねて、確認します。「自社について教えて」と聞けば、AIはたいてい、それらしく答えます。だから「うちはちゃんと認識されている」と安心してしまう。けれど、顧客が実際に投げるのは、自社の名前ではなく、「おすすめの◯◯は」という、指名なしの問いです。その指名なしの問いで挙がるかどうかこそが、勝負の分かれ目であり、自社名で確認するだけでは、その肝心の部分が、見えないのです。

規模は、AI上の可視性を、保証してくれません。そして同時に、これは、後発にとっての好機でもあります。規模で劣っていても、語られ方で上回れば、AIの推薦の上では、前に出られるからです。

この点は、本稿を通して、何度も戻ってくる主題です。AIの時代の可視性は、これまで積み上げてきた資産の大きさで決まるのではなく、その資産が、AIから見て「使える形」になっているかで決まります。大きな資産を持ちながら、それがAIに届いていない企業もあれば、小さくとも、すべてがAIに届く形に整っている企業もあります。問われているのは、量ではなく、届き方です。

II

「作り手」が、自分の推薦根拠を、持っていないことがあります。

この食い違いのなかで、とりわけ目を引く構造があります。

それは、商品の作り手・提供者そのものが、AIの推薦の根拠になる語りを、外にほとんど持っていない、という構造です。中編で、AIは「自社が自分で何を言っているか」より「外で自社がどう語られているか」を重く見る、と書きました。AIは、作り手の公式発信よりも、第三者の比較・解説・評価のほうを、推薦の根拠として引く傾向があります。

すると、何が起こるか。作り手が、自社の公式サイトや公式情報をどれだけ丁寧に整えても、それがAIの推薦の根拠としては、あまり使われない。AIは、作り手の言葉ではなく、その商品について第三者が語っている内容を引いて、推薦を組み立てる。結果として、人気のある作り手ほど、「自分について語っているのは他人ばかりで、自分自身の言葉は、AIの根拠にあまり使われていない」という状態に陥りやすいのです。自社の存在感は大きいのに、自社が発した情報が、AIの推薦の土台になっていない。

たとえば、ある分野で実質的に上位にある作り手が、AIの推薦の答えのなかでは、自社の公式情報をほとんど引用されず、もっぱら第三者の比較記事や解説を根拠に語られている、という状態が、珍しくありません。作り手は「自社は十分に発信している」と思っているのに、その発信が、AIの根拠としては素通りされている。語っている量と、根拠として使われている量が、食い違っているのです。これは、観測してみて初めて見える、見えにくい弱点です。

含意は、はっきりしています。作り手の打ち手は、公式情報を整えることだけでは、足りません。それに加えて、第三者の語られ方の側——どの参照元で、どう語られているか——を、視野に入れる必要があります。自分の言葉を磨くことと、外での語られ方を整えること。後者を欠いたまま前者だけを続けても、AIの推薦は、なかなか動きません。

ここでも、規模は助けになりません。大きな作り手でも、外での語られ方が薄ければ、同じ弱点を抱えます。むしろ、大手ほど「公式を整えれば伝わるはずだ」と考えがちで、外の語られ方を後回しにしやすい分、この落とし穴に、深くはまることがあります。

もっとも、第三者の語られ方を「整える」といっても、書き手に何かを書かせる、という話ではありません。できるのは、正確な情報を、第三者が参照しやすい形で世に置くこと。事実が食い違っていれば、正すこと。誤解が広まっていれば、一次情報をきちんと示すこと。地道な働きかけです。そして、どこまで動かせるかは、業種によって違います。作り手が情報を整えれば届く業種もあれば、外の媒体の比重が大きく、自社単独では動かしにくい業種もあります。ここでも、自社の業種の地図を読むことが、前提になります。

この食い違いは、広告費をかけているかどうかとは、別の問題でもあります。広告は、人の目に触れる回数を増やしますが、AIが根拠として引く参照元を、自動では増やしてくれません。広告で名前が知られても、AIの推薦の根拠になる語られ方が薄いままなら、指名なしの問いでは、やはり挙がりにくい。広告と、AIの推薦根拠は、別の回路なのです。

III

検索の1位も、そのままでは引き継がれません。

もう一つ、よくある前提があります。「自社は、検索でも上位に出る。だから、AIにも、当然、引用されているはずだ」。

ここは、ていねいに切り分けます。まず、認めるべきことを認めます。AIは、検索のために作られた良質なコンテンツも、読んでいます。 構造がしっかりして、内容が充実したページは、AIにとっても読みやすく、参照されやすい。その意味で、これまでのコンテンツ作りやSEOの積み重ねは、AIの時代にも、無駄にはなりません。土台としては、確かに効いています。

だから、ここで「SEOはもう古い」と言いたいわけではありません。良いコンテンツを作る力は、これからも効きます。問題は、それを検索順位だけで測ってしまうと、AIの世界での実際の効き目を、取り違える、という点にあります。

そのうえで、はっきりさせるべき違いがあります。検索エンジンがページを上位に並べる順序と、AIが引用・参照する先は、一致しません。 検索の順位は、「人がクリックして読みにいくための並べ替え」です。AIの引用は、「答えの根拠として使えるかどうか」の選び方です。基準が、そもそも違います。だから、検索で1位のページを、AIがほとんど引かない、ということも起こりますし、検索では目立たないページを、AIが繰り返し参照する、ということも起こります。

実務的には、こう考えると整理しやすくなります。検索対策は「人に見つけてもらうため」、AIへの対応は「AIに根拠として使ってもらうため」。重なる部分も多いけれど、目的が違う以上、効いているかどうかは、別々の物差しで測る必要があります。検索の数字が良いから安心、ではなく、AIの答えのなかで実際に引用・参照されているかを、別途、確かめる。この二本立てが要ります。

つまり、検索順位は、AIの推薦に、そのままは引き継がれません。検索の延長線上の発想だけで、AIにも対応できる、とは限らないのです。SEOで積んだ資産は、土台として効きます。けれど、その土台の上に、もう一段、別の見方——どの参照元が、AIに引用・参照されるのか、という見方——が必要になります。前編・中編で見てきた、ドライバーと、引用元・参照元の地図の話が、ここでも効いてきます。

言い換えれば、これまでの取り組みが無駄になる、という話ではありません。良いコンテンツも、正確な情報発信も、これまでの蓄積は、AIの時代の土台になります。変わるのは、測り方と、置きどころです。検索順位という一本の物差しに、AIに引用・参照されているか、というもう一本の物差しを足す。そして、コンテンツを「人に読ませる場所」だけでなく「AIが根拠として拾える場所」にも置く。発想を一段、広げるだけです。

この二本立ては、組織のなかでは、見落とされがちです。検索の順位は、長年使われてきた指標で、見慣れています。一方、AIに引用・参照されているか、という指標は、まだ多くの企業にとって、馴染みがありません。慣れた物差しだけを見ていると、AIの世界での実態を、丸ごと見落とすことになります。

IV

では、推される企業は、何が違うのでしょうか。

ここまでで、AI上の可視性は、規模でも、知名度でも、検索順位でも、説明できないことが見えてきました。では、実際に「推される側」に回っている企業は、何をしているのでしょうか。三部の話を、ここで束ねます。

第一に、自社のジャンルのドライバーを、押さえています(前編)。そのジャンルでAIが何を評価軸にしているか——料金か、効果と適合か、評判か、信頼か——を見極め、その軸に沿って語られる状態をつくっています。軸を外した訴求に、力を注いでいません。

第二に、自社の業種の引用元・参照元の地図を、読んでいます(中編)。一律の処方に飛びつくのではなく、自社の業種でAIが実際に頼っている参照元はどこかを観測し、効く場所で語られるように整えています。動かせる場所と、動かせない場所を、見分けています。

第三に、作り手として、外での語られ方まで、視野に入れています(本編II)。公式情報を整えるだけでなく、第三者の参照元のなかで、自社が正しく語られているかに、目を配っています。

これら三つに共通するのは、発信の前に、観測がある、という順序です。自社が言いたいことを起点にするのではなく、「AIから見て、自社がどう見えているか」を起点にしている。推される企業と、そうでない企業を分けているのは、派手な施策の有無ではなく、この順序の違いです。

逆に言えば、観測を飛ばして施策から入る企業は、たいてい、どこかで空回りします。良いコンテンツを作っても、AIが見ない場所に置いてしまう。良い訴求を考えても、ジャンルのドライバーから外れている。努力の量ではなく、努力の向きが、観測の有無で決まってしまうのです。同じ熱量でも、向ける先が合っているかどうかで、結果は大きく分かれます。

これは、努力を否定する話ではありません。むしろ逆です。多くの企業は、すでに、十分に努力しています。良いものを作り、丁寧に発信している。足りないのは、努力の量ではなく、その努力が、AIから見て効く場所に向いているか、という確認です。観測は、その確認のための作業にすぎません。すでにある努力を、効く方向に向け直すだけで、結果は変わりえます。新しく大きなことを始める前に、いまの努力の向きを確かめる——それが、いちばん費用対効果の高い一手であることも、少なくありません。

そして、もう一つ、共通点があります。推される側に回っている企業は、たいてい、早く始めています。なぜ、早く始めることが効くのか。最後に、それを見ます。

V

なぜ、早く始めた企業ほど、有利になるのか。

ここで、正直なことを先に言っておきます。

いま現在、AIから直接流れてくる売上や流入の量は、まだ大きくありません。AIに尋ねて、そのまま買う、という行動は、広がりつつあるとはいえ、全体から見れば、まだ小さな割合です。だから、「まだ急がなくてもいいのでは」と考えるのも、無理はありません。

それでも、早く始めることには、流入量とは別の、二つの確かな理由があります。

理由①:早く確立した語られ方は、長く効きます。 AIが参照しているのは、過去から積み上がってきた情報です。整合性の高い情報と、確かな語られ方を、早く確立した企業は、AIに参照される優先度が、長期的に高くなりやすい。これは、検索の世界で、先行した企業が、10年かけてドメインの信頼を積み上げ、後発が簡単には追いつけない位置を築いてきたのと、似た構造です。後から同じ位置を取りにいくには、より多くの手間と、より多くの費用がかかります。早く整えた企業は、いわば、低い土地代のうちに、良い場所を押さえているのです。

そして、この「土地代」は、これから上がっていく可能性が高いものです。AIを使う人が増え、企業の関心が高まるほど、良い参照元での語られ方を取りにいく競争は、激しくなります。いまはまだ、多くの企業が様子見をしているぶん、整える余地が大きく、競合も少ない。この「空いている」状態は、永遠には続きません。

理由②:観測の記録は、後から作れません。 中編で、引用元・参照元の地図は時間とともに動く、と書きました。AI上で、自社がどう語られ、どの参照元が伸び、どれが衰えているか——その時系列の記録は、見続けてきた企業の手元にしか、残りません。そして、過去にさかのぼって「あのとき、何がどう動いていたか」を観測し直すことは、できません。見ていなかった期間は、空白のまま、取り戻せないのです。早く観測を始めるほど、判断の土台になる記録が、厚く積み上がります。

そして、この記録は、いざ本格的に動くときに、効いてきます。何かの施策を打ったあとで、AIの語られ方が変わったのか、変わらなかったのか。それを判断するには、施策の前の状態が、記録として残っていなければなりません。記録がなければ、効いたかどうかも、わかりません。早く観測を始めることは、将来、自社の打ち手の良し悪しを判断するための、物差しを、いまのうちに用意しておくこと、でもあります。

この二つを合わせると、こうなります。流入が小さいうちに始めることに、むしろ優位があります。 小さいうちは、競争も緩く、整える余地も大きい。良い場所が、まだ空いています。流入が大きくなってから動く企業は、すでに位置を取られた地図の上で、後追いをすることになります。土地代が上がってから、良い場所を探すようなものです。

もう一つ、見落とされやすい点があります。早く始めた企業の優位は、時間とともに、開いていきます。良い場所を早く押さえ、記録を厚く積んだ企業は、その記録をもとに、次の手を、より正確に打てます。後から入る企業は、位置取りで遅れたうえに、判断の土台になる記録も薄い。差は、最初の数歩ではなく、積み重なった先で、複利のように、効いてきます。

そして、この記録は、社内を動かすときにも、効いてきます。「AIにどう見られているか」は、言葉で説明しても、なかなか実感を持って伝わりません。けれど、自社が時間とともにどう語られ方を変えてきたか、競合と比べてどの位置にいるか、という記録があれば、議論の土台になります。観測の記録は、対外的な打ち手のためだけでなく、社内で優先順位を決め、合意を作るための、共通の地図にもなります。

VI

ただし、「全部を、いますぐ」では、ありません。

ここで、誤解を避けておきます。早く始めるべきだ、と言っても、「いますぐ、全力で、すべてをやれ」という話ではありません。それは、流入の実態に照らせば、過剰です。

現実的なのは、その中間です。全振りはしないが、無視もしない。 小さく観測を始め、自社のジャンルのドライバーと、業種の引用元・参照元の地図を把握し、効く場所から、少しずつ手を入れていく。それだけで、後追いの側に回らずに済みます。大きな予算も、専任の組織も、最初から要るわけではありません。

迷いがちなのは、「まだ早いのでは」という感覚です。けれど、ここまで見てきたとおり、AIの推薦の入口は、流入の量より先に動いています。そして、観測の記録は、遡れません。だから、「様子見」のコストは、目には見えにくいけれど、確実に積み上がっていきます。見えないコストほど、後で効いてきます。早く始めることの価値は、派手な成果ではなく、「後で取り返せないものを、取りこぼさない」という、守りの価値でもあるのです。

もう一つ、付け加えておきます。早く始めるといっても、最初にやることは、大きな投資ではなく、観測です。観測は、ほとんど費用をかけずに始められます。まず、見る。見て、自社の地図とドライバーを把握する。手を入れるのは、そのあとで、効く場所からで構いません。順序さえ間違えなければ、過剰な負担なく、後追いを避けられます。早く始める、とは、早く大金を投じる、という意味ではなく、早く見始める、という意味です。

この「まず見る」という第一歩は、どんな規模の企業でも、今日から踏み出せます。特別な体制も、外部の大きな契約も、最初は要りません。自社の商品やブランドを、AIに尋ねてみる。それだけで、観測は始まります。大切なのは、完璧に始めることではなく、止めずに続けることです。小さく始めて、続けながら、必要なところを足していけばよいのです。

見送る、という選択も、もちろんあります。けれど、見送るなら、それは「気づかないうちに後れを取る」のではなく、「見たうえで、いまはここに力を割かない、と決める」ものでありたい。観測を始めることは、その判断を、勘ではなく、事実に基づいて下せるようにすること、でもあります。やる・やらないを決めるためにも、まず、見ておく価値があります。

VII

では、何から始めればいいのか。

最後に、三部を通した構えを、一つにまとめます。難しいことは、ありません。順序の話です。

まず、自社のジャンルのドライバーを知る(前編)。自社の業種では、AIは何を評価軸にしているのか。料金か、効果と適合か、評判か、信頼か。

次に、自社の業種の引用元・参照元の地図を読む(中編)。AIは、どの参照元を頼っているのか。どこが効き、どこが空白で、自社が動かせるのはどこか。エンジンによって、それがどう変わるか。

そして、規模や検索順位に頼り切らず、外での語られ方を整え、早く・継続して観測する(後編)。大きいから、有名だから、検索で上位だから、と安心せず、AIから見た自社を、定点的に見続ける。

具体的な第一歩は、拍子抜けするほど単純です。自社の商品やブランド、あるいは「おすすめの◯◯」を、複数のAIに、繰り返し尋ねてみる。自社は挙がるか。どんなドライバーで語られ、どんな「ただし」が付くか。その答えは、どの参照元を土台にしているか。そして、それが、月をまたいで、どう動いていくか。それを書き留めて、見続ける。

最初は、手元のメモで十分です。完璧な仕組みは、要りません。月に一度でも、同じ問いを、いくつかのAIに投げて、答えがどう変わったかを見比べる。挙がったか、外れたか。どんな理由で語られたか。どの参照元が土台だったか。それを並べて眺めるだけで、自社の地図は、少しずつ、輪郭を持ち始めます。続けるほど、その地図は、確かなものになっていきます。

三部を通して、繰り返してきたことは、一つです。発信の前に、観測がある。 自社が何を言いたいか、ではなく、AIから見て自社がどう見えているか、から始める。この順序を持てるかどうかが、これからのAIの時代に「推される側」に回れるかどうかを、静かに、しかし確実に、分けていきます。

最後に、一つだけ。ここまでの話は、特別な企業のための、特別な話ではありません。規模の大小に関わらず、どの企業にも、自社の業種の地図と、自社のドライバーがあります。大きい企業には、見落としやすい弱点があり、小さい企業には、語られ方で前に出る余地があります。どちらの側にいても、出発点は、同じです。まず、AIから見た自社を、見てみること。そこから、すべてが始まります。

First Step

AIから見て、いまの自社は、どう見えているでしょうか。

その問いから始まる無料の診断ツール「CWO Site Audit」を公開しています。観測から始まる、というだけのものです。

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本稿で、全3編は完結です。前編「AIは、なぜその商品を選ぶのか。」、中編「何が、AIの推薦を決めているのか。」、そして本編。AIの推薦を、ドライバー・引用元と参照元の地図・規模と時間という、三つの角度から整理してきました。いずれも、個別の企業名・サイト名・数値や、分析の具体的な手法には立ち入らず、業種レベルの構造として記しています。

三編を貫く問いは、ただ一つでした。「AIから見て、自社はどう見えているか」。検索の時代に積み上げてきた指標——順位や、流入や、知名度——は、AIの推薦を、そのままは説明しません。だからこそ、自分の目で、AIに尋ね、確かめるところから、始める必要があります。難しいことではありません。けれど、まだ多くの企業が、その最初の一歩を、踏み出していません。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。