AEO総研 — 前編 · General

AIは、なぜその商品を選ぶのか。

AIに「どれがいいですか」と尋ねると、AIは、具体的な商品名を挙げて答えます。 では、AIは、なぜ、その商品を選んだのでしょうか。 「良い商品だから」でも、「いちばん売れているから」でも、ありません。AIには、商品ジャンルごとに決まった「選び方」があります。今回は、その選び方について書きます。

本稿の中心にある「AIが商品を選ぶ評価軸は、カテゴリごとに違う」という見方は、私たち(AEO総研)が、消費財から金融・通信、BtoB のサービスまで、40を超えるカテゴリで、AIが実際に何を・どう推薦しているかを継続的に観測するなかで、見えてきたものです。公開レポートの要約ではなく、自分たちの観測に基づく整理として書いています。

I

AIは、もう、毎日「おすすめ」を言っています。

検索が、対話に置き換わりつつあります。

これまで、人は「気になったら検索して、いくつかのサイトを見比べて、決める」という順序で動いていました。いまは、その入口が、AIとの対話に移りつつあります。「30代の乾燥肌に合う化粧水は」「一人暮らしに向いた格安SIMは」「贈り物に向いたビールは」——こうした問いを、検索窓ではなく、AIに直接投げかける人が、急速に増えています。日本でも、日常の調べごとに生成AIを使う人の割合は、ここ1年で大きく伸びました。これは若い世代に限った話ではなく、すべての年代で起きています。

少し、場面を思い浮かべてみてください。ある人が、AIにこう尋ねます。「敏感肌でも使える化粧水を、3つ教えて」。AIは、数秒で、3つの商品名を挙げ、それぞれに「低刺激処方で評価されています」「保湿力が高いという声が多いです」と、短い理由を添えて返します。その人は、その答えを読んで、たいてい満足します。わざわざ、いくつもの通販サイトや比較記事を開きに行くことは、もう、しません。AIの答えが、そのまま検討のたたき台になります。

しかも、AIが一度に挙げる商品は、たいてい数個です。十数個のリンクを眺めて選んでいた検索とは違い、最初から、ごく少数に絞られた「椅子の取り合い」になっています。その数個に入れるかどうかが、検討に残れるかどうかを、これまでより強く決めます。

この変化は、これまで広告で名前を届けてきた企業にとって、見えにくい形で効いてきます。広告を見て検索した人は、自社サイトにたどり着けました。けれども、AIに尋ねた人は、AIが挙げなければ、そもそも自社の存在に行き当たりません。露出を増やすこととは別の場所で、勝負がついている、ということです。

ここが、これまでの検索と決定的に違うところです。AIは、検索エンジンのように「候補のリンクを並べる」のではありません。AIは、特定の商品名を挙げて、薦めます。すでに絞り込まれた答えを、文章で返してきます。

つまり、購買の検討の、いちばん最初の段階——どの商品を候補に入れるか——が、AIの回答のなかで起きるようになっています。検討の入口でAIに名前が挙がらなかった商品は、その後どれだけ良い広告を打っても、そもそも候補の土俵に上がりにくくなります。人は、最初に手にした数個の候補のなかから選びがちです。最初のひと言で挙がるかどうかが、これまで以上に効いてくる、ということです。

だからこそ、多くの企業が、こう考え始めています。「自社の商品は、AIに、どう語られているのだろうか」。「AI対策を、何か始めなければ」。

ただ、その手前で、もっと根本的な問いがあります。そして多くの企業が、この問いを飛ばして「とにかくAIに載りたい」と動き出してしまいます。

そもそもAIは、何を基準に、その商品を選んでいるのか。

この問いに答えられないまま打ち手を打つと、的を外します。AIが見ていないところを一生懸命に磨き、AIが本当に見ているところを放置する——よくある失敗は、たいてい、ここから始まります。本稿は、その基準、つまりAIが商品を選ぶときに当てている「物差し」の話です。

II

AIは、「理由」を持って、選んでいます。

最初に、ひとつ誤解を解いておきます。

AIの推薦は、でたらめではありません。サイコロを振っているわけでも、ただ知名度の高い順に並べているわけでもありません。AIは、その商品ジャンルにおいて「何が良し悪しを決めるのか」という、暗黙の評価軸に沿って、候補を並べ、理由を添えています。

たとえば、AIが格安SIMを薦めるとき、AIは「月額料金」「データ容量あたりの安さ」「通信品質」といった軸を中心に語ります。化粧水を薦めるとき、AIは「保湿などの効果」「肌質との相性」「成分」を中心に語ります。同じ「おすすめは」という一語の問いでも、AIが内部で当てている物差しは、ジャンルによって入れ替わっているのです。

本稿では、この「AIがそのジャンルで重視している評価軸」を、ドライバーと呼びます。直訳すれば「選ばれる理由を駆動しているもの」です。

なぜ、AIにこうした物差しが備わっているのか。仕組みを、ごく簡単に言えば、こうです。AIは、世の中に存在する膨大な文章を読み、そのうえで答えを組み立てています。あるジャンルの商品が、世間でどんな観点から語られ、比較され、評価されているか——その「語られ方の構造」を、AIは文章から学び取っています。だからドライバーは、AIの気まぐれではありません。そのジャンルが世の中でどう語られているか、という構造の反映なのです。

このことが、なぜ実務上、重要なのか。

理由は単純です。AIが重視していない軸を、いくら磨いても、推薦には効かないからです。料金が主戦場のジャンルで、自社がブランドの世界観をどれだけ丁寧に語っても、AIはそれをあまり拾いません。逆に、信頼や格が問われるジャンルで、ひたすら「最安です」と訴えても、AIの評価軸とはずれていきます。

たとえるなら、試験範囲を外して勉強するようなものです。出題されない範囲をどれだけ深く仕上げても、点数には結びつきません。発信の量を増やすことと、AIの物差しに沿うことは、まったく別の作業です。ところが実際には、「とにかく情報発信を増やそう」という形で、範囲を確かめないまま量だけを足してしまう企業が、少なくありません。手間をかけているのに効かない、という状態は、たいていここから生まれます。

ひとつ、よくある例を挙げます。料金で選ばれるジャンルの企業が、創業の物語やブランドの理念を一生懸命に発信しても、AIの推薦には、ほとんど効きません。そのジャンルでAIが見ているのは、料金とコスパの軸だからです。逆に、信頼で選ばれるジャンルの企業が、価格の安さばかりを連呼しても、評価軸からずれていきます。発信が良いか悪いか、ではなく、軸に合っているかどうか、なのです。

「良い商品を作って、丁寧に発信する」だけでは足りない、ということでもあります。そのジャンルでAIが見ているドライバーに沿って語られているかどうかが、推薦されるかどうかを大きく左右します。

そして、このドライバーには、はっきりとした特徴があります。ジャンルごとに、質的に違うのです。

III

その物差しは、商品ジャンルごとに、質的に違います。

ここが、本稿のいちばん大事なところです。

ドライバーは、すべてのジャンルに共通する一つの物差しではありません。ジャンルが変われば、AIが重視する軸そのものが入れ替わります。いくつかの「型」に分けて、見ていきます。具体的な企業名は出しませんが、身近なジャンルを思い浮かべながら読んでみてください。

料金が主導するジャンルがあります。通信回線や、一部の金融サービスのように、提供されるものの中身が横並びで比較しやすく、最後は「いくらか」で差がつく領域です。こうしたジャンルでは、AIは「月額」「コスパ」「条件あたりの安さ」を軸に商品を並べます。ブランドの歴史や世界観は、ほとんど評価に効きません。利用者の問いそのものが「いちばん安いのは」「コスパがいいのは」という形を取りやすいため、AIの答えも、その軸に引き寄せられます。

効果と適合が主導するジャンルがあります。スキンケアやサプリメントのように、「効くのか」「自分に合うのか」が問われる領域です。ここでAIが見るのは、効果の裏づけ、成分、そして「どんな肌質・体質の人に向くか」という適合の情報です。価格は二次的になり、「安いから薦める」という語り方には、なりにくくなります。むしろ「敏感肌でも使えるか」「どんな悩みに効くか」といった、合う・合わないの軸が前に出ます。

嗜好と評判が主導するジャンルがあります。飲料や嗜好品のように、最後は「好み」で決まり、定評の広さが効く領域です。AIは「味の評価」「支持の広がり」「定番としての位置づけ」を軸に語ります。スペックの優劣よりも、どれだけ広く好かれているか、長く支持されてきたか、という質感が前に出ます。

格と信頼が主導するジャンルがあります。クレジットカードや一部の金融商品のように、機能の差が比較的小さく、最後は「その会社・そのブランドをどれだけ信頼できるか」が効く領域です。ここでAIは、ブランドの格や信頼性、ステータスといった軸を持ち出します。料金や機能の数字を並べるだけでは、上位に挙がりにくくなります。

これらは一例にすぎません。実際にはもっと多くの型があり、ジャンルによっては複数の軸が混ざります。料金と効果の両方が効くジャンル、評判と信頼が重なるジャンルもあります。重要なのは、同じ「おすすめ」という問いでも、AIが当てている物差しが、ジャンルをまたぐと入れ替わるという事実です。

この事実には、実務上の含意があります。あるジャンルで成功した訴求の型を、別のジャンルにそのまま持ち込んでも、効かない、ということです。料金で勝ってきた企業の発想を、信頼で決まるジャンルに当てはめると、AIの評価軸から外れます。世界観で勝ってきたブランドの発想を、横並び比較のジャンルに持ち込んでも、同じことが起きます。「AI対策」を、業種を問わない一つのレシピで語ること自体に、すでに無理がある——これが、ドライバーがジャンルごとに違うことの、最初の帰結です。

「他社がやっているから、自社も同じことを」という横並びの発想が効きにくいのも、同じ理由です。参考にすべきは、同じ業種・同じ評価軸で戦っている相手であって、業種の違う成功例ではありません。

IV

同じ商品でも、「問い方」で、物差しは動きます。

ドライバーは、ジャンルをまたぐと入れ替わる、と書きました。さらに言えば、同じジャンルの中でも、問い方によって、当てられる物差しは動きます。

化粧水を例に取ります。「普段使いにいい化粧水は」と尋ねたときと、「敏感肌でも使える化粧水は」と尋ねたとき、「プレゼントに向いた化粧水は」と尋ねたときでは、AIの答えの組み立てが変わります。最初の問いでは、使い心地とコストのバランスが前に出ます。二つ目では、低刺激であることと、肌質への適合が決め手になります。三つ目では、見た目や定評、贈り物として無難かどうかが、評価軸に加わります。同じ商品でも、文脈が変われば、評価のされ方が変わるのです。

これは、考えてみれば当たり前のことです。人が商品を選ぶとき、「誰のために」「どんな場面で」使うかによって、重視する点は変わります。AIは、その文脈をくみ取って、当てる物差しを切り替えています。つまり、AIに投げかけられる「問いの型」の数だけ、ドライバーの組み合わせがある、ということになります。

ここから出てくる発想は、こうです。すべての問いの文脈で1位を狙うのではなく、自社が本当に勝てる文脈はどこかを見極め、その文脈のドライバーを押さえる。万人向けの最大公約数を狙うより、自社の強みが効く文脈で、確実に挙がる状態をつくるほうが、現実的です。

これは、検索の時代に「どのキーワードで上位を取るか」を考えたのと、似ているようで、違います。狙うのは、特定の検索語ではありません。AIが当てる評価軸と、その軸が前に出る問いの文脈です。キーワードの一致ではなく、評価軸との一致を考える——ここに、検索対策との発想の違いがあります。

これは、消費者向けの商品に限った話ではありません。法人向けでも同じです。「中小企業向けの会計ソフトは」と尋ねたときと、「上場準備中の会社に向く会計ソフトは」と尋ねたときでは、AIが当てる軸は変わります。前者は使いやすさと価格が、後者は対応範囲や実績・信頼が、前に出ます。買い手が誰で、どんな場面で使うのか——その文脈が、評価軸を決めています。

V

なぜ、物差しは、こんなに違うのか。

物差しがジャンルや文脈で違う、という話は、奇妙に聞こえるかもしれません。けれども、これはAIに特有の不思議な現象ではありません。もともと、商品の性質そのものが、ジャンルによって違うからです。

マーケティングの世界では、商品はずっと前から、いくつかの性質に分けて考えられてきました。買う前にスペックを並べて比較できる商品。実際に使ってみないと良し悪しがわからない商品。買ったあとも本当のところは確かめにくく、最後は信頼で選ぶしかない商品。こうした性質の違いは、人がその商品をどう選ぶか、何を決め手にするかを、根本から変えます。

横並びで比較しやすい商品では、人は条件と価格で選びます。だから、その語られ方も「どれが安いか・条件がいいか」に寄ります。使ってみないとわからない商品では、人は他人の体験や効果の裏づけを頼りにします。だから語られ方は「効くか・合うか」に寄ります。好みで決まる商品では、人は定評や評判を手がかりにします。確かめにくく、信頼で選ぶしかない商品では、人は会社やブランドの格を見ます。これは、AIが登場するずっと前から、変わらない人間の選び方です。

AIは、こうした「人による語られ方の違い」を、そのまま文章から吸収しています。だから、AIが当てる物差しがジャンルで入れ替わるのは、むしろ自然なことなのです。AIは、世の中の語られ方を映す鏡のように振る舞います。そして鏡である以上、自社についての語られ方が薄ければ、AIはそれを映しようがありません。これは、後編で扱う「では、何が映るのか」という話に、つながっていきます。

この「鏡」という見立てには、含意があります。自社がいくら声を張り上げても、鏡に映るのは、世の中での語られ方の総体です。だとすれば、企業の仕事は、自社サイトで一方的に発信することから、AIが読みにいく場所で、自社がどう語られるかを形づくることへと、重心が移っていきます。何を言うか、よりも、どこで・どう語られるか。この「どこで」の話を、中編で扱います。

ここから、ひとつの実務的な原則が出てきます。自社のジャンルが、どの性質に属し、どのドライバーで語られているのかを、まず正しく見立てること。それを誤ると、打ち手の方向そのものがずれます。横並び比較のジャンルにいる企業が、信頼や世界観の訴求に力を注いでも、AIの評価軸とは交わりません。逆もまた同じです。方向が合っていない努力は、量を増やしても、報われにくいのです。

「自社のジャンルでは、何が物差しになっているのか」。この問いに答えることが、AIに推されるための、最初の一歩になります。

VI

AIには、「外す理由」も、あります。

ドライバーには、もう一つの側面があります。

ここまでは「選ばれる理由」、いわば勝ち筋の話でした。しかしAIは、肯定的なことだけを語るわけではありません。AIは、留保や懸念も拾って、回答に織り込みます。商品を候補から外す理由、あるいは「ただし、こういう声もあります」と添える理由——これを、負のドライバーと呼びます。

なぜAIは、わざわざ短所まで語るのか。理由は、II章で触れたことの裏返しです。AIは、賛否の両方を含む大量の文章を読んでいます。良い評価も、不満の声も、注意喚起も、すべて材料になっています。だからAIは、長所だけを並べた宣伝文ではなく、「全体としてどう語られているか」をならして提示します。結果として、短所や留保が、答えのなかに自然に混ざります。

負のドライバーには、ジャンルごとに典型的な形があります。

効果をうたう商品のジャンルでは、「効果の主張と、使った人の実感とのあいだに開きがある」という語られ方が、よく現れます。打ち出している効能と、実際の評価がかみ合っていないと、AIはその差を、そのまま提示します。

肌や体に触れる商品のジャンルでは、「敏感な人には刺激になる」といった注意が、繰り返し現れます。万人向けに見える商品でも、特定の層には合わない、という留保です。

料金で選ばれるジャンルでは、「安いはずが、条件によっては割高になる」という、いわば価格の反転が、負のドライバーになります。表面の安さと、使い方次第の実質コストのずれを、AIは指摘します。

健康や安全に関わるジャンルでは、副作用や注意点が、そのまま負のドライバーとして語られます。

ここで多くの企業が見落とすのは、次の点です。自社が「良い点」をどれだけ丁寧に発信しても、負のドライバーが残っていれば、AIはその両方を並べて語るということです。長所の訴求と、短所の打ち消しは、別の作業です。勝ち筋のドライバーを満たすことと、負のドライバーを抑えることは、両方が必要になります。片方だけでは、「良い、ただし〜」という語られ方が、いつまでも残ります。そして、その「ただし」が定着すると、あとから覆すのは、簡単ではありません。

なお、語られていないこと自体が、不利に働く場合もあります。AIにとって、判断の材料が乏しい商品は、自信を持って薦めにくい対象になります。沈黙は、肯定でも否定でもなく、単に「土俵に上がっていない」状態です。良い悪い以前に、語られていない、という状態が、いちばん多い実態かもしれません。

もうひとつ、見落とされがちな点があります。打ち出す効能や約束を大きくするほど、実感とのあいだに開きが生まれやすく、負のドライバーを自ら育ててしまうことがある、ということです。強い訴求は、満たせているうちは勝ち筋になりますが、満たせなくなった瞬間に「言っているほどではない」という負の語りに変わります。背伸びした訴求より、満たし続けられる約束のほうが、AIの語られ方の上では、長く効きます。

VII

では、自社は、何から始めればいいのか。

ここまでの話は、抽象的に聞こえるかもしれません。最後に、構えだけ、整理しておきます。具体的な手順ではなく、考え方の順序です。

第一に、自社のジャンルの物差しを見立てること。自社が属するジャンルでは、AIは何を軸に語っているのか。料金か、効果と適合か、評判か、信頼か。自社の商品名や「おすすめの◯◯」をAIに尋ね、返ってくる理由づけの言葉を観察するだけでも、当てられている物差しは、ある程度見えてきます。

第二に、その物差しの上で、自社が正しく語られているかを確かめること。勝ち筋のドライバーに沿った情報が、AIの届く範囲に十分あるか。あるいは、ジャンルの軸とずれた話ばかりを発信していないか。

第三に、負のドライバーを把握し、抑えること。自社の商品について、AIがどんな留保を添えているか。その「ただし」を、放置していないか。

ひとつ、注意があります。AIの答えは、毎回まったく同じ、ではありません。同じ問いでも、表現や時期によって、挙がる商品や理由づけは、ある程度ゆらぎます。だからこそ、たまたま一度だけ挙がったかどうかではなく、ドライバーを満たして、繰り返し安定して挙がる状態をつくれているかが問われます。一度の結果に一喜一憂するより、語られ方の傾向を、継続して見ることが大切になります。

ここで、こう思う方も、いるかもしれません。「AI経由の購買は、まだ小さいのではないか」と。実際、いま現在、AIから直接流れてくる売上の量は、まだ大きくはありません。けれども、本稿が扱っているのは、売上そのものではなく、その手前の「検討の入口」です。どの商品が候補に挙がり、どう語られるか——この入口は、売上の量より先に動きます。入口での語られ方は、すぐには数字に現れませんが、後から急いで取り返すのが難しい種類のものでもあります。なぜ早く構えるほど効くのか、という点は、後編で改めて扱います。

三つの構えに共通するのは、いずれも「自社が何を言いたいか」ではなく、「AIから見て、自社がどう見えているか」を起点にしている点です。発信の前に、観測がある。この順序が逆になったまま動いている企業が、まだ大半です。

そして、この見立ても確認も、AIの語られ方を実際に観測しないことには、始まりません。自社サイトを整えること自体が目的なのではなく、AI上のジャンルのドライバーに、自社がどう乗っているか——それを見るところから、すべてが始まります。

難しく構える必要は、ありません。まずは、自社の商品や「おすすめの◯◯」を、いくつかのAIに、何度か尋ねてみる。挙がるか、挙がらないか。どんな理由づけが添えられ、どんな「ただし」が付くか。それを書き留めるだけでも、自社が立っている物差しの形は、見えてきます。観測は、そこから始められます。

VIII

だから、「良い商品なら、推される」とは、限りません。

ここまでを、整理します。

言い換えると、こうなります。自社の商品が「良い」ことと、AIがそのジャンルで見ている物差しの上で「正しく語られている」ことは、別のことです。 良い商品でも、ジャンルのドライバーから外れた語られ方をしていれば、AIの推薦には乗りにくい。逆に、ドライバーを正確に押さえている商品は、規模が小さくても、AIに取り上げられることがあります。大きいから推される、有名だから推される、とは限らない——これは、後編でもう一度、別の角度から扱うテーマです。

この「規模と推薦の食い違い」は、実は、これまでブランドを大きく育ててきた企業ほど、見落としやすいところです。積み上げてきた知名度や売上の大きさが、そのままAIの推薦に引き継がれる——そう感じやすいからです。けれども、AIが見ているのは規模そのものではなく、ジャンルのドライバーに沿って、どう語られているか、です。ここに、これまでの強者が足をすくわれる余地があり、同時に、後発が割って入る余地もあります。

そして、ここで、自然な次の問いが立ちます。

AIは、そのドライバーを、どこを見て判断しているのでしょうか。「効果の裏づけがある」「広く支持されている」「信頼できる」——AIは、それを、何を参照して結論づけているのか。

その答えは、自社サイトの中だけにはありません。AIは、自社の発信と、自社の外にある参照元とを組み合わせて、ジャンルのドライバーを満たしているかどうかを判断しています。そして、AIがどの参照元を取り上げるかという「地形」は、ジャンルごとに、まったく違います。

中編では、この「引用元・参照元の地形」を扱います。なぜ、ある業種では特定の比較メディアが効き、別の業種ではそれがまったく効かないのか。なぜ「どんな業種にも効く万能なAI対策」が存在しないのか。AIの推薦を実際に動かしている仕組みの側に、踏み込みます。

First Step

自社の商品は、AIから見て、いま、どう見えているでしょうか。

その問いから始まる無料の診断ツール「CWO Site Audit」を公開しています。観測から始まる、というだけのものです。

Site Audit を試す →

本稿は、AIの商品推薦に関する一般的な構造を、業種レベルで整理したものです。個別の企業名・数値や、判定の具体的な手法には立ち入っていません。続く中編・後編で、推薦を決める仕組みと、企業が取るべき構えを、順に扱います。